【医師監修】食道裂孔ヘルニアとは?内視鏡での診断と治療をわかりやすく解説

『逆流性食道炎って診断されたけど、実は食道裂孔ヘルニア?』
『食道と胃のつなぎ目が緩いと言われたけど、どういうこと?』
『最近、胸焼けやげっぷが増えてつらい…』

こうした症状の背景にあることが多いのが、「食道裂孔ヘルニア(しょくどうれっこうヘルニア)」です。
放置すると逆流性食道炎の悪化や食道の炎症、粘膜の変性(バレット食道)につながる可能性もあります。

この記事では、食道裂孔ヘルニアの原因・症状・内視鏡での診断方法・治療法まで、消化器専門医が詳しく解説します。


1. 食道裂孔ヘルニアとは?

横隔膜の「裂孔(れっこう)」という食道が通る穴から、本来はお腹の中にある胃の一部が胸の方にずれてしまう状態を「食道裂孔ヘルニア」といいます。

通常、食道と胃の境目は横隔膜の下にあり、胃酸の逆流を防ぐ役割があります。
しかしヘルニアになると、その境目が緩み、胃酸が食道に逆流しやすくなるため、胸焼けなどの症状が起きやすくなるのです。


2. 食道裂孔ヘルニアの主な原因

食道裂孔ヘルニアの発症には、以下のような要因が関係しています。

  • 加齢による筋力の低下(特に50代以降に多い)
  • 肥満や腹圧の上昇(便秘・妊娠・重い荷物など)
  • 猫背や姿勢の悪さによる腹圧のかかり方の変化
  • 食道や胃の手術後の影響

特に日本では高齢化に伴い、食道裂孔ヘルニアの発見率は年々上昇しています。


3. 食道裂孔ヘルニアの症状

食道裂孔ヘルニアは、初期には無症状のこともありますが、次のような症状が現れることがあります。

  • 胸焼け、酸っぱいものがこみ上げる感じ(呑酸)
  • 背中やみぞおちの痛み
  • げっぷが頻繁に出る
  • 寝ているときに咳き込む、のどの違和感
  • 食後の胃もたれ、吐き気
  • 声のかすれ(声帯への刺激)

これらは見逃されやすいのが特徴です。


4. 食道裂孔ヘルニアの診断は胃カメラで可能

胃カメラ(上部内視鏡検査)は、食道裂孔ヘルニアの診断にもっとも有効な検査です。

当院では、内視鏡で次のような所見を確認します。

  • 食道と胃の接合部(EGJ)の位置のずれ
  • 胃酸逆流による食道粘膜のただれや炎症(逆流性食道炎)
  • 長期間の逆流で生じるバレット食道(がんの前段階)

必要に応じて組織の一部を採取(生検)し、がん化の兆候や慢性炎症の有無を確認することもあります。

当院では鎮静剤を使用した無痛の胃カメラ検査を行っており、
『寝ている間に終わった』『思っていたよりずっと楽だった』という声を多くいただいています。


5. 食道裂孔ヘルニアの治療方法

治療は、症状の程度とヘルニアの大きさによって異なります。

■ 軽度の場合:生活習慣の改善と薬物療法

  • 食後すぐに横にならない
  • 枕を高くして寝る(頭を上げる)
  • 腹圧を上げない姿勢・便秘の改善
  • 食べすぎ・早食いを避ける
  • 胃酸分泌を抑える薬(PPIやP-CAB)を内服

こうした対策で症状が落ち着くことが多く、日常生活の質(QOL)も改善されます。

■ 重度の場合:手術の検討

  • 内服薬でも症状が改善しない
  • 食道や咽頭の炎症が重度で、合併症のリスクが高い
  • 長期間の逆流によりバレット食道の進行やがん化のリスクが高い場合

このような場合には、外科的にヘルニアを整復する手術(腹腔鏡手術)が検討されることもあります。


6. 放置せず、まずは胃カメラで正確な診断を

食道裂孔ヘルニアは放置していると逆流性食道炎が慢性化し、

  • 食道潰瘍
  • 出血・狭窄
  • バレット食道
  • さらには食道腺がんのリスク上昇につながることがあります。

しかし、早期に発見すれば、生活指導や内服薬で十分にコントロール可能な病気です。
そのためには、症状が軽いうちに内視鏡検査を受けることが何より重要です。


まとめ:胸焼けやげっぷが続く方は、内視鏡で確認を

  • 食道裂孔ヘルニアは、胃の一部が横隔膜を越えてずれる病気
  • 胸焼けや逆流症状の原因になる
  • 胃カメラで正確に診断でき、早期なら薬と生活改善でコントロール可能
  • 長期放置はバレット食道・がんのリスクに
  • 不安な症状がある場合は、まずはご相談ください

最新の内視鏡機器、無痛内視鏡検査、消化器領域の専門医による丁寧な検査と説明で、安心して受けていただける環境を整えています。
当院には、葛飾区をはじめ、江戸川区、足立区、台東区、松戸市、市川市、三郷市も含めて広い地域から多くの患者様が来院されています。

【作成・監修】
金町よしだクリニック
院長 吉田 翼
(日本消化器内視鏡学会 専門医、日本消化器病学会 専門医、日本肝臓学会 専門医、日本内科学会 総合内科専門医)