ピロリ菌感染

ピロリ菌（ヘリコバクター・ピロリ）は、胃の粘膜に感染する細菌であり、長期間にわたって胃内にとどまることで慢性的な炎症を引き起こします。この感染が原因となり、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、さらには胃がんのリスクも高まるとされています。特に幼少期に感染し、そのまま長期にわたり保持されるケースが多いため、早期の検査と除菌治療が重要です。除菌により、疾患の進行を防ぐことが期待できます。

胃がん

胃がんは、胃の粘膜にある細胞が悪性化して腫瘍を形成する疾患で、かつては日本人の死因の上位を占めていました。近年ではピロリ菌の感染との関連が明らかになり、除菌治療の普及や胃内視鏡（胃カメラ）による検診の精度向上により、早期発見・早期治療が可能となってきています。早期段階では症状が乏しいことも多く、定期的な内視鏡検査による予防的なチェックが非常に重要です。

胃潰瘍

胃潰瘍とは、胃の粘膜が胃酸や消化酵素によって深く傷つけられ、組織がえぐられて潰瘍が形成された状態を指します。主な症状には、みぞおちの痛み、吐き気、食欲低下、黒色便などがあり、症状が進むと出血や穿孔のリスクもあります。原因としては、ピロリ菌感染、ストレス、薬剤（特にNSAIDs）の使用などが挙げられます。早期の診断と内服治療、生活習慣の改善が求められます。

逆流性食道炎

逆流性食道炎は、胃酸が食道へ逆流することで食道の粘膜が炎症を起こす疾患です。胸やけや呑酸（すっぱい液が上がる感じ）、咳、喉の違和感など、日常生活に支障をきたす症状がみられることがあります。原因には、肥満や食生活の乱れ、ストレス、加齢による下部食道括約筋のゆるみなどが関係しています。薬物療法とともに、食事・姿勢・生活習慣の見直しが大切です。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症や潰瘍が起こる疾患で、原因ははっきりしていませんが、自己免疫反応が関係していると考えられています。下痢や血便、腹痛が繰り返され、症状には波があり、寛解と再燃を繰り返すのが特徴です。難病指定されており、長期的な管理が必要です。適切な内服治療と定期的な経過観察が重要で、内視鏡によるモニタリングも欠かせません。

胆石症

胆石症とは、胆のう内に胆石（結石）が形成される疾患で、胆管に石が詰まると激しい右上腹部の痛み（胆石発作）を引き起こします。症状は食後に現れることが多く、悪心、嘔吐、発熱を伴うこともあります。結石が胆管に落ちてしまうと胆汁の流れが妨げられ、胆のう炎や胆管炎、すい炎を引き起こすこともあります。無症状のことも多いため、定期的な腹部エコーでのチェックが推奨されます。

憩室炎

憩室炎とは、大腸の壁にできた小さな袋状の突起（憩室）が炎症を起こした状態を指します。多くは加齢とともに発生し、便秘や腹圧の上昇、食物繊維の不足が主な原因とされています。軽症の場合は腹痛や発熱のみですが、重症化すると膿瘍や穿孔、腸閉そくを引き起こすこともあります。診断にはCTや大腸内視鏡が有効で、初期治療では抗菌薬を用い、再発を防ぐための生活指導も大切です。

虫垂炎

虫垂炎とは、盲腸の先にある虫垂と呼ばれる部分に炎症が起きる疾患で、一般には「盲腸」として知られています。初期にはへその周囲の鈍い痛みから始まり、次第に右下腹部へと痛みが移動するのが典型的な経過です。吐き気や発熱、食欲不振などを伴うこともあり、放置すると虫垂が破裂し腹膜炎へと進行するおそれがあります。急性の場合は手術や抗生物質による治療が必要です。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群は、腸に明確な器質的異常がないにもかかわらず、慢性的な腹痛や下痢・便秘などの便通異常が繰り返される機能性疾患です。ストレスや生活リズムの乱れ、食習慣などが悪化要因とされており、若年層から中高年まで幅広くみられます。腸の過敏な運動や神経の働きが関係していると考えられ、症状は生活の質に大きな影響を及ぼします。治療は薬物療法と生活改善が中心です。

大腸ポリープ

大腸ポリープは、大腸の粘膜に発生する良性の腫瘍であり、多くは無症状ですが、出血や便潜血検査の陽性反応で発見されることがあります。一部のポリープは将来的にがん化するおそれがあるため、内視鏡による切除が推奨されます。大きさや形、組織型によってリスクが異なるため、内視鏡検査と病理診断を通じて的確に判断します。定期的な内視鏡検診による早期発見が重要です。

痔核

痔核とは、肛門付近の静脈がうっ血し、腫れてこぶ状になる状態を指します。いわゆる「いぼ痔」に該当し、排便時の出血や肛門周囲の違和感、痛みを伴うことがあります。便秘や長時間の座位、妊娠・出産などが原因となることが多く、慢性化すると日常生活に大きな支障をきたします。症状の程度に応じて、生活習慣の改善、薬物療法、外科的処置など適切な対応が必要です。

大腸がん

大腸がんは、大腸の粘膜から発生する悪性腫瘍で、日本では発症頻度・死亡率ともに高い疾患の一つです。初期はほとんど自覚症状がなく、進行すると血便、腹痛、体重減少、便通異常などが現れます。高脂肪・低繊維の食生活、喫煙、過度の飲酒、運動不足などがリスク因子とされています。定期的な内視鏡検査による早期発見と、内視鏡的切除・外科手術による早期治療が鍵となります。

膵炎

膵炎は、膵臓に炎症が生じる疾患で、急性膵炎と慢性膵炎に分かれます。急性膵炎は突然みぞおちに強い痛みを感じ、吐き気や嘔吐、発熱を伴うことがあります。慢性膵炎では、長期的な炎症により膵臓の機能が低下し、消化不良や糖尿病の原因となることもあります。原因としては過度の飲酒や胆石が多く、重症化すると命にかかわることもあるため、早期診断と迅速な治療が重要です。

膵がん

膵がんは、膵臓に発生する悪性腫瘍で、発見が難しく、進行が早いことが特徴です。初期はほとんど症状がなく、病状が進んでから黄疸、体重減少、背中の痛みなどが現れることが多いため、予後が悪いがんの一つとされています。家族歴、糖尿病、喫煙、慢性膵炎などがリスク要因とされます。早期発見のためには、定期的な画像検査と、症状のわずかな変化を見逃さないことが大切です。

腸閉そく

腸閉そくとは、腸の内容物が通らなくなり、腸管が詰まった状態を指します。腹痛、吐き気、嘔吐、排便・排ガスの停止などの症状が急激に現れ、放置すると腸管の血流障害や壊死に進行する危険性があります。原因としては、術後の癒着、腫瘍、炎症性疾患、ヘルニアなどが挙げられます。状態に応じて保存的治療または緊急手術が必要となるため、早期対応が求められます。

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアは、胃の痛みや不快感、早期満腹感、胃もたれ、吐き気などの症状があるにもかかわらず、内視鏡などの検査で明確な異常が見つからない状態を指します。ストレスや自律神経の乱れ、胃の運動機能の低下などが関与しているとされ、慢性的に症状が続くこともあります。症状に応じた薬物療法とともに、食事や生活習慣の見直しが重要です。